胃がん

胃がんは、胃の内側を覆う粘膜細胞が異常に増殖し、腫瘍を形成する悪性疾患です。がん細胞は時間の経過とともに胃の深層や周囲のリンパ節、他の臓器へと広がることがあり、早期の段階で発見・治療することが極めて重要です。

日本では長らく胃がんの罹患数が多く、特に中高年の男性に多く見られる傾向があります。その一因として、ピロリ菌感染が深く関与しており、慢性胃炎や粘膜の萎縮を経て、がん化に至るケースが少なくありません。生活習慣や遺伝的要因も関係するため、予防や早期発見の意識を高めることが大切です。

胃がんによっておこる症状 

胃がんの初期段階では、特有の症状が乏しいことが多く、自覚しにくいのが特徴です。そのため、健康診断や人間ドックで偶然見つかることも珍しくありません。

進行してくると、食事のたびに胃の不快感を覚えたり、みぞおちの痛み、食欲の低下、体重減少といった症状が出てきます。さらに進行が進むと、吐血や黒色便、貧血といった消化管出血の兆候が見られることもあります。これらの症状はほかの胃の病気とも共通するため、「いつもと違う」と感じた時点で早めに医療機関を受診することが早期発見につながります。

胃がんの検査方法 

胃がんの診断には、胃の中を直接観察できる内視鏡検査が非常に重要です。内視鏡では粘膜の状態を目で確認できるだけでなく、気になる部位から組織を採取し、病理検査を行うことでがんの確定診断が可能となります。胃がんを早期発見するためには内視鏡医の技術と使う道具の性能が非常に重要になります。

加えて、がんの広がりや転移の有無を調べる目的で、CTや超音波内視鏡、血液検査（腫瘍マーカー）なども用いられます。これらの情報を総合的に判断し、がんの進行度（ステージ）を決定したうえで、最適な治療方針が立てられます。定期的な内視鏡検査を受けることは、症状のない段階での早期発見につながり、命を守る第一歩となります。

胃がんの治療 

胃がんの治療法は、がんの進行具合や患者さんの体力、年齢などによって異なります。早期の段階で発見された場合は、内視鏡を使ってがん組織を取り除く「内視鏡的粘膜下層剥離術（ESD）」が選ばれることがあります。この方法は身体への負担が少なく、術後の回復も早いという利点があります。

がんが粘膜の深部に及んでいる場合や、周囲の組織へ広がっている場合には、外科的な手術によって胃の一部または全部を切除する必要があります。さらに、病状に応じて抗がん剤や放射線治療を併用するケースもあります。最近では、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬といった新しい治療法も登場しており、治療の幅が広がっています。それでもまだまだ予後の悪い悪性腫瘍の一つです。

治療は病期や患者さんの希望に応じて選択されますので、専門医とよく相談しながら決めていくことが大切です。

胃がん治療後のフォローアップ

胃がんの治療が終わった後も、再発や転移を早期に発見するための定期的なフォローアップが不可欠です。特に術後2〜3年間は再発のリスクが高いとされており、定期的な内視鏡検査や画像検査、血液検査が継続して行われます。

また、ピロリ菌感染がある方は、再発リスクを抑えるために除菌治療を受けることが推奨されます。生活習慣の見直しも重要で、栄養バランスの取れた食事、過度な飲酒や喫煙の回避、適度な運動などが、胃の健康維持に役立ちます。

胃がんの再発予防は、単に治療を終えることだけでなく、長期的な健康管理の継続によって初めて実現されます。心身のケアを含めたサポート体制のもと、無理のないペースで日常生活を取り戻していくことが望まれます。