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逆流性食道炎は、胃酸や胃の内容物が食道に逆流することで、食道の粘膜に炎症を起こす疾患です。英語では「Gastroesophageal Reflux Disease(GERD)」と呼ばれ、現代社会において非常に多く見られる疾患の一つとなっています。
日本では成人の約10-20%が逆流性食道炎の症状を経験しているとされており、食生活の欧米化、高齢化社会の進展、ストレス社会の影響などにより、その患者数は年々増加傾向にあります。特に40歳以降の中高年層に多く見られますが、近年では若年層での発症も増加しています。
正常な状態では、食道と胃の境界部分にある下部食道括約筋という筋肉が、胃酸の食道への逆流を防ぐ働きをしています。この下部食道括約筋は、通常は締まっており、食べ物を飲み込む時だけ緩んで胃への通路を作ります。
しかし、この下部食道括約筋の機能が低下したり、胃酸の分泌が過剰になったり、胃の内容物の排出が遅れたりすると、胃酸が食道に逆流してしまいます。食道の粘膜は胃の粘膜と異なり、胃酸に対する防御機能が弱いため、胃酸に曝されると炎症を起こしてしまいます。
逆流性食道炎は、内視鏡検査の所見により分類されます。最も広く用いられているのはロサンゼルス分類で、粘膜障害の程度によってグレードA からグレードDまでの4段階に分けられます。
グレードAは軽度の粘膜障害で、長さ5mm以下の縦走する粘膜欠損が認められる状態です。グレードBは長さ5mmを超える縦走する粘膜欠損があるものの、粘膜ひだの頂部間には及ばない状態です。グレードCとグレードDはより重篤な粘膜障害を示し、粘膜欠損が粘膜ひだ間に及ぶ状態です。
また、内視鏡検査で明らかな粘膜障害が認められないものの、胸やけなどの典型的な症状がある場合は「非びらん性胃食道逆流症(NERD)」と診断されます。実際には、逆流性食道炎の症状を訴える患者さんの約60-70%がこのNERDに該当するとされています。
逆流性食道炎の症状は多岐にわたりますが、最も特徴的な症状は胸やけと呑酸です。これらの症状は食後、特に食べ過ぎた後や脂肪分の多い食事を摂取した後に現れやすく、横になったり前かがみの姿勢を取ったりすると悪化する傾向があります。
胸やけは、胸骨の後ろ側に感じる焼けるような痛みや不快感です。この症状は胃酸が食道に逆流することで食道の粘膜が刺激されて生じます。胸やけの程度は個人差が大きく、軽度の不快感から日常生活に支障をきたすほどの強い症状まで様々です。
胸やけは通常、食後30分から2時間以内に現れることが多く、特に夕食後や就寝時に強くなる傾向があります。また、炭酸飲料、アルコール、コーヒー、柑橘類などの摂取により症状が誘発されることがあります。
呑酸は、酸っぱい液体が口の中に上がってくる症状です。これは胃酸が食道を逆流し、さらに咽頭まで達することで生じます。呑酸は特に朝起きた時や食後に現れやすく、口の中に酸っぱい味や苦い味を感じます。
重症の場合には、実際に胃の内容物が口まで逆流してくることもあり、この場合は逆流物に食べ物の残渣が含まれることがあります。
食道の炎症が進行すると、食べ物を飲み込む際に困難を感じたり、痛みを感じたりすることがあります。これは食道の粘膜の腫れや炎症により、食道の内腔が狭くなることで生じます。
嚥下困難は通常、固形物から始まり、病状が進行すると液体の摂取時にも症状が現れるようになります。また、熱い食べ物や辛い食べ物を摂取した際に、特に強い痛みを感じることがあります。
逆流性食道炎による胸痛は、心臓の病気による胸痛と区別が困難な場合があります。この胸痛は胸骨の後ろ側に感じる重苦しい痛みや圧迫感として現れ、時には肩や背中にまで放散することがあります。
食道由来の胸痛は、食事に関連して現れることが多く、制酸剤の服用により改善することが特徴です。しかし、心疾患との鑑別は重要であり、必要に応じて心電図検査や心エコー検査などの心臓の検査も併せて行います。
逆流した胃酸が咽頭まで達すると、のどの違和感や異物感を感じることがあります。これは「咽頭異物感」や「球状感」と呼ばれ、のどに何かが詰まったような感覚として現れます。
この症状は特に朝起きた時に強く感じることが多く、うがいをしたり水分を摂取したりすることで一時的に改善することがあります。
胃酸の逆流が声帯まで達すると、声がかすれる症状が現れることがあります。これは胃酸により声帯が刺激され、炎症を起こすことで生じます。声枯れは特に朝起きた時に強く、日中は徐々に改善することが多いのが特徴です。
逆流性食道炎では、慢性的な咳が症状として現れることがあります。これは胃酸が気管や気管支を刺激することで生じる反射性の咳で、通常の咳止め薬では改善しないことが特徴です。
この咳は特に夜間や早朝に強くなる傾向があり、横になることで胃酸の逆流が促進されることが原因とされています。
胃酸の逆流により、口の中に酸っぱい臭いが生じることがあります。また、逆流した胃の内容物により、口臭が強くなることもあります。この口臭は通常の口腔ケアでは改善せず、根本的な治療が必要です。
慢性的な胃酸の逆流により、歯のエナメル質が溶けてしまう酸蝕症が生じることがあります。特に奥歯の咬合面や前歯の裏側に酸蝕が見られることが多く、歯科医師による定期的なチェックが重要です。
逆流性食道炎では、喘息に似た症状が現れることがあります。これは胃酸が気管支を刺激することで気管支の収縮が起こり、呼吸困難や喘鳴が生じるためです。
この症状は特に夜間に強くなることが多く、通常の気管支喘息の治療では十分な効果が得られないことが特徴です。
重症の逆流性食道炎では、逆流した胃の内容物が気管に入り込み、誤嚥性肺炎を引き起こすことがあります。これは特に高齢者や嚥下機能が低下している方に多く見られる合併症です。
胃酸分泌異常・胃運動異常・環境因子が挙げられる
胃酸の分泌が過剰になると、逆流する胃酸の量も増加し、食道の粘膜により強い刺激を与えます。胃酸過多の原因には、ストレス、特定の食べ物、薬剤、ヘリコバクター・ピロリ菌除菌などがあります。
胃酸のpHが正常よりも低い(より酸性)場合、少量の逆流でも食道の粘膜に強い炎症を起こします。また、胃酸だけでなく、ペプシンという消化酵素も逆流することで、食道粘膜の障害がより強くなります。
食道裂孔ヘルニアは、横隔膜の食道裂孔から胃の一部が胸腔内に脱出した状態です。この状態では下部食道括約筋の解剖学的な位置関係が変化し、逆流防止機能が低下します。
食道裂孔ヘルニアは加齢とともに頻度が増加し、50歳以上では約30-50%の方に認められるとされています。ヘルニアの程度が大きいほど、逆流性食道炎の症状も重篤になる傾向があります。
逆流性食道炎の最も重要な原因は、下部食道括約筋の機能低下です。この筋肉は通常、胃酸の食道への逆流を防ぐ役割を果たしていますが、様々な要因により機能が低下すると、胃酸が食道に逆流しやすくなります。
食道裂孔ヘルニアは、横隔膜の食道裂孔から胃の一部が胸腔内に脱出した状態です。この状態では下部食道括約筋の解剖学的な位置関係が変化し、逆流防止機能が低下します。
食道裂孔ヘルニアは加齢とともに頻度が増加し、50歳以上では約30-50%の方に認められるとされています。ヘルニアの程度が大きいほど、逆流性食道炎の症状も重篤になる傾向があります。
胃の内容物が十二指腸への排出される速度が遅くなると、胃内圧が上昇し、逆流が起こりやすくなります。胃排出遅延の原因には、糖尿病、甲状腺機能低下症、薬剤の副作用などがあります。
食事により胃が適切に拡張しない状態では、胃内圧が上昇し、逆流のリスクが高まります。この機能障害は機能性ディスペプシアとも関連が深く、消化器症状が複雑になることがあります。
脂肪分の多い食事、辛い食べ物、酸性の食べ物、チョコレート、ミント類などは下部食道括約筋を弛緩させ、逆流を促進します。また、炭酸飲料は胃内圧を上昇させ、逆流のリスクを高めます。
特に以下の食品は症状を悪化させることが知られています:
アルコールは下部食道括約筋を弛緩させる作用があり、逆流を促進します。また、アルコール自体が食道粘膜を刺激し、炎症を悪化させる可能性があります。特に度数の高いアルコールや大量飲酒は症状を著しく悪化させます。
喫煙は複数のメカニズムにより逆流性食道炎を悪化させます。ニコチンは下部食道括約筋を弛緩させ、また唾液の分泌を減少させることで食道の自浄作用を低下させます。さらに、喫煙により咳が誘発されると腹圧が上昇し、逆流が促進されます。
肥満は逆流性食道炎の重要な危険因子です。腹部肥満により腹圧が上昇し、胃から食道への逆流が促進されます。また、内臓脂肪の蓄積により胃が圧迫され、胃内圧の上昇につながります。
BMI(体格指数)が25を超える方では、正常体重の方と比較して逆流性食道炎のリスクが約2-3倍高くなることが報告されています。
一般的に適度な運動(30分程度のジョギング)などは発症リスクを下げると言われていますが、激しい運動(最大心拍数をもたらす運動)や筋力トレーニングでも胃酸逆流を上昇させることが報告されています。
年齢を重ねるにつれて、下部食道括約筋の筋力は自然に低下していきます。これは筋肉の構造タンパク質の変化や神経支配の変化によるもので、40歳以降に逆流性食道炎の有病率が増加する一因となっています。
また、加齢に伴い食道の蠕動運動も低下するため、逆流した胃酸を胃に押し戻す機能も弱くなります。
以下の薬剤は下部食道括約筋を弛緩させ、逆流性食道炎を悪化させる可能性があります
一部の薬剤は直接的に食道粘膜を刺激し、炎症を引き起こします
妊娠中は複数の要因により逆流性食道炎が起こりやすくなります。妊娠ホルモンであるプロゲステロンは下部食道括約筋を弛緩させ、また胎児の成長により腹圧が上昇します。妊娠後期では約80%の妊婦が胸やけの症状を経験するとされています。
慢性的な便秘により腹圧が上昇し、逆流が促進されることがあります。また、便秘により腸内のガスが増加し、胃を圧迫することも逆流の原因となります。
慢性的なストレスは自律神経系に影響を与え、胃酸分泌の増加や胃の運動機能の低下を引き起こします。また、ストレスにより食生活が乱れ、症状を悪化させる食品の摂取が増えることも関係しています。
現代社会におけるストレスの増加は、逆流性食道炎の有病率上昇の一因と考えられています。
逆流性食道炎の診断は、症状の聴取、身体診察、そして必要に応じて各種検査を組み合わせて行われます。典型的な症状がある場合は、問診だけでも診断の手がかりを得ることができますが、確定診断や重症度の評価には検査が必要です。
症状の程度を客観的に評価するため、標準化された問診票が用いられます。日本では「Frequency Scale for the Symptoms of GERD(FSSG)」という問診票が広く使用されており、12の質問項目により症状の頻度と程度を評価します。
この問診票では、胸やけ症状と呑酸症状についてそれぞれ6項目ずつの質問があり、各項目を0点から4点で評価します。合計8点以上で逆流性食道炎が疑われ、内視鏡検査の適応とされています。
患者さんの生活習慣について詳しく聞き取ることで、症状の原因となる要因を特定します。食事内容、食事時間、飲酒量、喫煙歴、体重変化、服薬状況、ストレスの程度などを詳細に確認します。
逆流性食道炎の診断において最も重要な検査が上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)です。この検査により、食道粘膜の炎症の程度を直接観察し、ロサンゼルス分類に基づいた重症度評価を行います。
内視鏡検査では、食道下端の粘膜欠損、発赤、浮腫、白苔の付着などの所見を観察します。また、食道裂孔ヘルニアの有無や程度も同時に評価することができます。
通常の白色光観察に加えて、狭帯域光観察(NBI)などの特殊光を用いることで、微細な粘膜の変化をより詳しく観察することができます。これにより、軽度の炎症や前癌病変の検出が可能になります。
内視鏡検査で異常所見が認められた場合、組織の一部を採取して顕微鏡検査を行います。これにより、炎症の程度や性質を詳しく評価し、悪性疾患との鑑別を行います。
食道内のpH(酸性度)を24時間連続して測定する検査です。鼻から細いpHセンサーを挿入し、食道下端のpHを記録します。この検査により、実際に胃酸の逆流がどの程度起こっているかを客観的に評価できます。
正常では食道のpHは中性(pH7前後)に保たれていますが、逆流性食道炎では酸性(pH4未満)になる時間が延長します。pH4未満の時間が全体の4%以上を占める場合、異常逆流と判定されます。
従来のpHモニタリングに加えて、インピーダンスという電気的な測定を組み合わせた検査です。これにより、酸性の逆流だけでなく、非酸性の逆流(弱酸性や中性の逆流)も検出することができます。
バリウムを服用してX線撮影を行う検査です。食道の形態異常、胃食道逆流の程度、食道裂孔ヘルニアの有無などを評価することができます。内視鏡検査が困難な場合や、食道の運動機能を評価したい場合に実施されます。
造影検査では、立位と臥位での撮影を行い、体位変換により逆流の程度を観察します。また、発泡剤を併用することで、食道の詳細な形態を観察することも可能です。
食道の運動機能を詳しく評価する検査です。鼻から細いカテーテルを挿入し、食道内の圧力変化を測定します。下部食道括約筋の圧力、食道の蠕動運動の状態を詳しく評価することができます。
この検査により、下部食道括約筋の機能低下の程度や、食道アカラシアなどの食道運動機能異常の鑑別診断が可能です。
従来のマノメトリーよりも多数のセンサーを用いて、食道の運動機能をより詳細に解析する検査です。コンピューター解析により、食道の運動パターンを視覚的に表示することができます。
プロトンポンプ阻害薬(PPI)という胃酸分泌抑制薬を1-2週間服用し、症状の改善度により診断を行う方法です。PPIにより症状が著明に改善する場合、逆流性食道炎の可能性が高いと判断されます。
この方法は簡便で患者さんの負担が少ないため、症状が典型的で内視鏡検査で明らかな所見がない場合(NERD)の診断に用いられることがあります。
胸痛が主症状の場合、心疾患との鑑別が重要です。心電図、心エコー検査、場合によっては運動負荷試験なども実施し、心疾患の有無を確認します。
慢性咳嗽や喘息様症状がある場合、呼吸機能検査により気管支喘息などの呼吸器疾患との鑑別を行います。
逆流性食道炎と似た症状を示す疾患との鑑別が重要です。主な鑑別疾患には以下があります
上腹部の症状が主体で、内視鏡検査で異常所見がない疾患です。胃の運動機能異常や内臓知覚過敏が原因とされています。
食道の蠕動運動の異常と下部食道括約筋の弛緩不全により嚥下困難を起こす疾患です。食道内圧測定により診断されます。
アレルギー反応により食道に好酸球が浸潤し、炎症を起こす疾患です。内視鏡検査と生検により診断されます。
嚥下困難や胸痛などの症状が逆流性食道炎と類似することがあります。内視鏡検査と生検により鑑別されます。
逆流性食道炎の治療方針は、症状の程度、内視鏡所見の重症度、患者さんの生活の質への影響などを総合的に考慮して決定されます。治療の目標は、症状の改善、粘膜治癒の促進、合併症の予防、そして生活の質の向上です。
治療は段階的に行われ、まず生活習慣の改善から始まり、必要に応じて薬物療法、さらに重症例では外科治療も検討されます。患者さんの症状や生活スタイルに応じて、個別化された治療計画を立てることが重要です。
食事療法は逆流性食道炎治療の基本となります。適切な食事療法により、症状の改善と薬物療法の効果向上が期待できます。
避けるべき食品 脂肪分の多い食品は下部食道括約筋を弛緩させ、胃排出を遅延させるため避ける必要があります。具体的には、揚げ物、肉の脂身、クリーム、バターなどの高脂肪食品です。
酸性の強い食品は食道粘膜を直接刺激するため、柑橘類、トマト、酢の物などは控えめにします。また、香辛料、チョコレート、ミント類、炭酸飲料、カフェイン含有飲料も症状を悪化させる可能性があります。
推奨される食品 たんぱく質が豊富で脂肪分の少ない食品、例えば白身魚、鶏のささみ、豆腐、卵白などは推奨されます。野菜類では、キャベツ、ブロッコリー、人参などのアルカリ性食品が良いとされています。
穀類では、精白米よりも消化の良いおかゆや、全粒粉パンなどが適しています。果物では、バナナやメロンなど酸性度の低いものを選びます。
食事方法の工夫 一回の食事量を減らし、回数を増やす「少量頻回食」が基本です。これにより胃の負担を軽減し、逆流のリスクを下げることができます。
食事時間は、就寝3時間前までに済ませることが推奨されます。食後すぐに横になることは避け、食後は30分程度上体を起こした状態を保ちます。
食べ方についても、よく噛んでゆっくり食べることで消化を助け、胃の負担を軽減します。また、食事中の水分摂取は適度に抑え、食間に十分な水分を摂取します。
肥満は逆流性食道炎の重要な危険因子であり、体重減少により症状の著明な改善が期待できます。BMI25以上の方では、5-10%の体重減少を目標とします。
体重管理には、カロリー制限と適度な運動の組み合わせが効果的です。ただし、激しい運動は腹圧上昇により症状を悪化させる可能性があるため、ウォーキングや水泳などの軽度から中等度の有酸素運動が推奨されます。
就寝時の工夫 就寝時には上半身を10-20度挙上することで、重力により逆流を防ぐことができます。ベッドの頭側を高くしたり、楔型のクッションを使用したりする方法があります。
また、左側臥位で寝ることで、胃の解剖学的な位置により逆流が起こりにくくなります。
衣服の選択 腹部を締め付ける衣服は腹圧を上昇させ、逆流を促進するため避けます。ベルトをきつく締めすぎないよう注意し、ゆったりとした衣服を選びます。
禁煙・節酒 喫煙は下部食道括約筋機能を低下させるため、禁煙が必要です。禁煙により症状の改善が期待でき、また食道がんのリスク軽減にもつながります。
飲酒についても、可能な限り控えることが推奨されます。飲酒する場合は、度数の低いものを少量に留め、就寝前の飲酒は避けます。
プロトンポンプ阻害薬は、胃酸分泌を強力に抑制する薬剤で、逆流性食道炎治療の第一選択薬とされています。胃壁細胞のプロトンポンプ(水素イオンポンプ)を阻害することで胃酸分泌を抑制します。
作用機序 PPIは胃壁細胞のプロトンポンプに不可逆的に結合し、24時間以上にわたって胃酸分泌を抑制します。この強力な酸分泌抑制により、食道粘膜の治癒が促進され、症状の改善が得られます。
種類と特徴 現在使用可能なPPIには、オメプラゾール、ランソプラゾール、ラベプラゾール、エソメプラゾール、ボノプラザンなどがあります。これらの薬剤は効果に大きな差はありませんが、代謝経路や副作用プロファイルが若干異なります。
使用方法 PPIは通常、朝食前30分に服用します。これは、食事により胃酸分泌が刺激される前に薬剤を作用させるためです。初期治療では4-8週間の投与を行い、症状の改善と粘膜治癒を図ります。
維持療法 症状が改善した後も、再発予防のために維持療法が必要な場合があります。維持療法では、最小有効量での継続投与を行います。
H2受容体拮抗薬は、胃壁細胞のヒスタミンH2受容体を阻害し、胃酸分泌を抑制します。PPIと比較すると胃酸抑制効果は弱いものの、軽症例や維持療法に使用されます。
種類と特徴 ファモチジン、ラニチジン、ニザチジンなどがあります。これらの薬剤は食後の胃酸分泌抑制に優れており、食後の症状改善に効果的です。
使用方法 通常、1日2回(朝・夕食後)または就寝前1回の服用を行います。効果発現が早く、服用後1-2時間で効果が現れます。
胃の運動機能を改善し、胃内容物の排出を促進する薬剤です。胃排出遅延が逆流の原因となっている場合に効果的です。
ドンペリドン ドパミンD2受容体拮抗作用により、胃腸の運動を促進します。上部消化管の運動機能改善に優れ、吐き気や食後膨満感の改善にも効果があります。
モサプリド セロトニン5-HT4受容体作動作用により、消化管の運動を促進します。上部消化管全体の運動機能を改善し、胃排出促進効果があります。
六君子湯 胃腸機能を改善する漢方薬で、食欲不振や胃もたれの改善に効果があります。消化管運動機能改善薬との併用により、より効果的な治療が期待できます。
半夏厚朴湯 咽頭異物感や精神的ストレスに対して効果がある漢方薬です。逆流性食道炎に伴う咽頭症状の改善に有用です。
食道粘膜を直接保護し、治癒を促進する薬剤です。他の治療薬との併用により、より効果的な治療が期待できます。
スクラルファート アルミニウム製剤で、酸性条件下で粘膜に付着し、保護膜を形成します。食道粘膜の直接的な保護により、症状の改善と治癒促進効果があります。
レバミピド プロスタグランジンE2の産生を促進し、粘膜保護作用を示します。抗炎症作用もあり、食道粘膜の炎症軽減に効果があります。
胃酸を中和し、一時的な症状緩和を図る薬剤です。即効性があるため、頓用薬として使用されることが多いです。
アルギン酸ナトリウム 胃酸と反応してゲル状の膜を形成し、胃の表面に浮いて逆流を物理的に防ぎます。症状出現時の即効性のある治療薬として有用です。
薬物療法で十分な効果が得られない場合や、薬物療法の継続が困難な場合に外科治療が検討されます。現在では腹腔鏡を用いた低侵襲手術が主流となっています。
最も一般的な逆流防止手術で、胃底部を食道下端に巻き付けて逆流防止機構を再建する方法です。
手術手技 腹腔鏡下に胃底部を完全に(360度)食道に巻き付けるニッセン法と、部分的に(270度)巻き付けるトペット法があります。手術時間は通常1-2時間で、入院期間は3-5日程度です。
適応 PPIによる治療で十分な効果が得られない症例、若年者で長期間の薬物治療を避けたい症例、食道裂孔ヘルニアを伴う症例などが適応となります。
治療成績 手術により約90%の患者さんで症状の改善が得られ、長期的な効果も期待できます。ただし、術後に嚥下困難やガス膨満症候群などの合併症が生じることがあります。
磁気ビーズを連結したリング状のデバイスを食道下端に留置し、下部食道括約筋の機能を補助する新しい治療法です。
特徴 嚥下時には磁力に抗してリングが開き、安静時には磁力により閉鎖することで逆流を防ぎます。従来の手術と比較して侵襲が少なく、術後の機能障害も少ないとされています。
従来は食道アカラシアの治療として開発されたPOEMですが、逆流性食道炎に対する応用も検討されています。ただし、まだ研究段階であり、標準的な治療法としては確立されていません。
内視鏡を用いて胃食道接合部の粘膜を切除し、瘢痕化により逆流防止機構を強化する治療法です。外科手術と比較して侵襲が少なく、日帰り治療も可能です。
内視鏡的に下部食道括約筋にラジオ波を照射し、筋肉の収縮を促す治療法です。局所麻酔下で実施可能で、入院期間も短縮できます。
慢性的な症状による心理的ストレスに対して、カウンセリングや心理療法が有効な場合があります。また、患者会への参加により、同じ疾患を持つ方との情報交換も有益です。
逆流性食道炎は慢性疾患であり、完治は困難ですが、適切な治療により症状のコントロールは十分可能です。多くの患者さんで良好な症状改善が得られ、生活の質の向上が期待できます。
治療を行わない場合、症状は徐々に進行し、食道粘膜の障害も悪化する傾向があります。また、長期間放置すると、食道狭窄、バレット食道、食道腺がんなどの合併症のリスクが高まります。
適切な治療により、約80-90%の患者さんで症状の改善が得られます。PPIによる治療では、4-8週間で粘膜治癒が期待でき、症状も著明に改善します。
薬物治療を中止すると、多くの場合6ヶ月以内に症状が再発します。このため、維持療法や生活習慣の継続的な改善が重要です。
長期間の胃酸逆流により、食道下端の正常な扁平上皮が円柱上皮に置き換わった状態です。重症度によりshortバレット食道(SSBE)、longバレット食道(LSBE)に分類されます。バレット食道は食道腺がんの前がん病変と考えられており、定期的な内視鏡検査による経過観察が必要です。
サーベイランス バレット食道が確認された場合、初回は6-12ヶ月3-6ヶ月後、その後は1-3年ごとの内視鏡検査を行います。異形成(前がん病変)が認められた場合は、より頻回な検査や内視鏡治療が検討されます。
重症の食道炎が持続すると、治癒過程で瘢痕形成により食道が狭くなることがあります。嚥下困難が主症状となり、内視鏡的バルーン拡張術や外科的治療が必要になる場合があります。
重症の食道炎では、食道粘膜から出血することがあります。少量の出血では貧血が主症状ですが、大量出血の場合は緊急治療が必要です。
逆流した胃内容物が気管に入り込むことで肺炎を起こすことがあります。特に高齢者や嚥下機能が低下している方でリスクが高くなります。