鳥肌胃炎

「鳥肌胃炎（とりはだいえん）」とは、胃の内視鏡検査で鳥肌のように細かく隆起した粘膜が観察される状態を指す通称で、医学的には「胃前庭部腺窩上皮過形成」や「びまん性隆起性胃炎」などと表現されることもあります。

胃の粘膜がびまん性（広範囲）に盛り上がり、まるで鳥肌のような見た目になることからこの呼称が用いられていますが、正式な病名ではなく、あくまで内視鏡所見の一形態です。

この変化は、多くの場合ピロリ菌感染との関連が深いとされています。したがって、鳥肌胃炎は胃粘膜の慢性的な炎症や萎縮、さらには将来的な胃がんリスクとの関連性が考慮されることがあります。

鳥肌胃炎によっておこる症状  

鳥肌胃炎そのものは、明確な自覚症状を伴わないことが多く、健康診断や人間ドックでの内視鏡検査中に偶然発見されるケースが大半です。

ただし、背景に慢性胃炎やピロリ菌感染がある場合には、胃の不快感や膨満感、軽度の胃痛、食欲不振、吐き気などが現れることもあります。

また、胃粘膜の変化が進行している段階では、粘膜の保護機能が低下し、外的刺激（辛いものやアルコール、ストレスなど）に敏感になることで症状が出やすくなる場合があります。

重要なのは、この所見が将来的な胃がんのリスクを示唆することがあるため、無症状であっても軽視すべきではないという点です

鳥肌胃炎の検査方法 

鳥肌胃炎の診断は、胃カメラ（上部消化管内視鏡検査）によって粘膜表面の微細な変化を直接確認することが基本となります。

この所見が見られた場合には、ピロリ菌感染の有無を調べるための検査が必須となります。尿素呼気試験、便中抗原検査、血中抗体検査など、複数の手法がありますが、最も信頼性の高いものを選択する必要があります。

また、念のために粘膜の一部を採取して生検（組織検査）を行い、がんや腫瘍性病変が隠れていないかを調べることも重要です。鳥肌胃炎は見た目の印象が強いため、臨床医がしっかりと鑑別診断を行う必要があります。

鳥肌胃炎の治療  

鳥肌胃炎そのものに対して直接的な治療を行うことは一般的ではありません。なぜなら、この状態はあくまで胃粘膜の変化に対する「所見」であって、単独の疾患ではないからです。

しかし、原因の多くを占めるピロリ菌感染が確認された場合には、除菌治療が非常に重要です。除菌を行うことで、胃粘膜の慢性炎症が鎮静化し、鳥肌様の粘膜変化も徐々に改善する傾向があります。

また、症状がある場合には、胃酸を抑える薬や胃粘膜を保護する薬が用いられ、生活面では食事の刺激を避け、禁煙・節酒・十分な睡眠の確保といった基本的なセルフケアが勧められます。

鳥肌胃炎のフォローアップ

鳥肌胃炎と診断された場合、重要なのは定期的な内視鏡による経過観察です。たとえ除菌が成功したとしても、胃粘膜の変化がすぐに消えるわけではありません。

医師の判断により、半年から1年に一度のペースで胃カメラ検査を受けることが勧められます。特に、胃がんのリスクが高いと考えられる背景（萎縮性胃炎の併存、家族歴、高齢者など）がある場合は、より慎重な対応が求められます。

また、生活習慣の見直しは継続して行う必要があります。ピロリ菌除菌後も再感染のリスクがゼロではなく、胃粘膜の回復には長期的な視点が必要だからです。